◆アトピー性皮膚炎について◆
●アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎という病名は1933年、アメリカの皮膚科医サルツバーガーが初めて用いました。
「アトピー」という言葉の由来はラテン語で「奇妙な」「とらえどころのない」などの意味があります。
サルツバーガーは湿疹を分類しようとした際に遺伝的要素とアレルギーがかかわっている、わけの分からない
湿疹を「アトピー性皮膚炎」と名づけました。
それでは日本では具体的には何をもってしてアトピーと呼ぶのかと言えば次のようになります。

@ かゆみがあること

A アトピー性皮膚炎を引き起こす遺伝的な体質がある人に幼少時に発症し、成長するに従い各年齢層に特徴的な症状を示しながらだんだんと良くなっていくこと。

B慢性・反復性の経過をたどること
● アトピー性皮膚炎はどうして起こるの?

私たちの体は、外部からウイルスや細菌、寄生虫などの異物が侵入してくると、それをやっつけようとする力を持っています。これが免疫です。

免疫の中心的働きを担うのは血液の中の白血球の一種であるリンパ球です。リンパ球にはTリンパ球と
Bリンパ球があり、Tリンパ球は外部から侵入してくる異物を抗原として認識したり、免疫システムの司令塔として、異物を排除するためにさまざまな指示を出します。

一方Bリンパ球はTリンパ球の指示を受けてたんぱく質の一種である抗体を作り出します。そして、この抗体がそれぞれ対応する抗原(異物)と結合し、抗原を無力化して排除します。

この免疫システムのおかげで私たちは一度かかった感染症(はしかや風疹など)には2度とかからなくなったり、かかっても軽くすむのはそのためです。

しかし、この免疫システムが過剰に作用して本来人体に害のないものに対してでも抗体を作ることがあります、これがアレルギーです。そしてアレルギーの元となる抗原をアレルゲンと呼びます。

そのアレルゲンは人により様々ですが、ダニ、ハウスダスト、花粉、カビなどがあげられます。その物質が侵入するたびにアレルギーが生じます。

ダニはアトピー性皮膚炎の患者さんに最もよく見られるアレルゲンです。乳児から成人にいたるまで年齢を問わずアトピー性皮膚炎の患者さんの7割がダニに対して陽性です。

その他のアレルゲン
ダニ コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ など
食べ物 たまご、牛乳、大豆、、小麦、米、えび、かに など
花粉 スギ、ブタクサ、ヨモギ、カエデ など
カビ カンジダ、アスペルギルス など

●アトピー性皮膚炎のスキンケア
アトピー性皮膚炎では皮膚の角質層の水分保持能力が低下しているため、バリア機能が下がり、外部からの刺激で湿疹を生じやすい状態になっています。

そこで日頃から皮膚をいたわり、湿疹を悪化させない、あるいは新たに生じさせないようにする必要があります。
外用剤の塗り方だけでなく、入浴や食事、睡眠、衣類などに関するケアを通して皮膚を良い状態にもって行くことが、アトピー性皮膚炎におけるスキンケアには大切です。その基本は皮膚の清潔を保ち、乾燥を防ぐことです。

入浴:
「石鹸を使ってもいいの」と思われる方も多いと思いますが、ナイロンのタオルではなく、木綿のタオルでゴシゴシやらなければ問題ないと言われています。また湿疹の症状の強い部分は石鹸を良く泡立て手でやさしく洗うように心がけます。

また入浴に関して温泉は単純泉は問題ありませんが、硫黄を含む温泉は湿疹を悪化させるのでご注意ください。

衣類:
肌着は吸湿性のよい木綿製のものを選ぶようにしましょう、羊毛や化繊製のハイネックの衣類は避けましょう。
また女性はピアス、ネックレスなどの装身具はかぶれを起こして症状の悪化にもなりますので注意が必要です。

また衣類を選択する際には一般の洗剤でも問題はありませんが、洗剤の成分が衣類に残らないようにしてください。
食事:
食事療法は1980年代から90年代の初めにかけて一時期、小児科医を中心にアトピー性皮膚炎対策としてかなり実施されました。
食事とアトピーの関係に否定的であった皮膚科医と肯定的であった小児科医との間に混乱が一時期生じました。
食事制限の方法は様々で主なアレルゲンのみを制限するものから、ラスト法、皮内テストで陽性と出たものすべてを制限するものまであり、後者では子供の患者さんの発育、栄養障害が問題となりました。
そこで小児科学会の内部で反省が行われ、今日では食事療法はほとんど見られなくなりました。
当時あわやヒエしか食べられずにいた子供の患者さんがガリガリにやせ細り、皮膚症状も改善されない患者さんもおり、衝撃を与えました。

乳幼児では消化管が未発達なため、食事が十分に消化されないまま吸収されることがあり、結果的にアレルゲンとして作用することがあります。様々な研究によれば3歳までは一部の患者さんで食物アレルギーが原因となってアトピー性皮膚炎が悪化することがあるものの、それ以上の年齢になると、消化管の機能が発達するため、食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎の悪化はほとんどないことが分かっています。


●アトピー性皮膚炎の薬物療法
薬物療法を用いるポイントは湿疹として炎症症状がある場合にはステロイド外用剤、さらにかゆみが強い場合は抗アレルギー薬もしくは抗ヒスタミン薬の内服が行われます。

ステロイドとは副腎皮膚ホルモンのことで、腎臓の上についている小さな臓器(副腎)から分泌される物質です。
炎症を抑える作用があることから第二次大戦のころから応用研究が進められましたが、日本でも一時期副作用などが指摘され1991年以降からは新製品の開発はストップしています。

ステロイド薬は脂に溶けやすく皮膚に塗ると皮脂腺から吸収され、細胞レベルでは細胞膜を通り抜けて核の中に入り、ステロイド受容体に結合します。するとステロイド反応タンパクが作られ、これによりステロイドの効果が現れます。
主な作用に@血管収縮作用A抗炎症作用B免疫抑制作用C細胞増殖抑制作用などがあります。

日本で1980年代ごろに起きたステロイドバッシングにはいろんな批判的な情報がマスコミによって流布されたことがあります。
事実ステロイド外用剤による副作用(医師からの処方に従わず自分勝手に処方した、ステロイドを熟知しない医師から処方された、ステロイド外用剤を薬局で買い、化粧の下地として長年使用して起こった)がありました。

しかし使用方法や使い方に問題があり現在では多くの医者が対症療法として使用する薬物ですので、根本治療ではありませんが広く用いられています。

現在でもアトピー性皮膚炎の正体と根治法は諸説様々ですが、免疫システムを正常に働かせ、自然治癒力を高めることが改善の近道のようです。



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